黒部川を訪ねて

黒部川を遡上するには 代表的な物に 上の廊下下の廊下・黒部源流が有ります。源流の中に赤木沢が有ります。 赤木岳を源とし 黒部川の源流に注いでいるもっとも美しい沢です。初めての方にお勧めの沢です。
最近 この辺り特に下の廊下上の廊下は、事故が多く・・・悲しい思いをされてる方もおられます。簡単に思って入らないで下さい。
安心の出来るリーダーと綿密な計画をもって入山してください。お願いします。

黒部川を訪ねて


@上の廊下
<9月12日〜9月16日>

富山県を代表する川に黒部川が有ります
水源は鷲羽岳を水源とし日本海に注ぎます
古くは暴れ川として随分苦しめられた
黒部ダムが出来た事により その心配も少なくなった様です
その代わりにダムの底に溜まった土を流してこちらではだいぶ問題になりました(廃砂)
そのために河口付近から日本海が汚染され魚・海藻がダメージを受けました
ダムから日本海方向を下の廊下と言います
前に下の廊下に行った時夜寝ていて川の底を転がる石の音が嫌に耳に付いていました
その位この川は石や土を削り取っていく流れの厳しい川なんだ と思ったことが有ります
怖かったですね
ダムから岩苔小谷までを上の廊下と言い岩苔から薬師沢小屋付近まで奥の廊下と言います
これより鷲羽岳までを黒部源流と言います

祖父沢・五郎沢との出合いを過ぎ赤木沢 そして岩苔の沢の水が注ぎ流れになり祖父沢と岩苔沢の源は雲の平です
以前岩苔小谷の一滴を見たことがあります
一滴は山の雪が地下に入り 夏でも残る残雪の下にかずかに水の音を感じる・・・・・えっ〜これが〜  と思うような処です
岩苔小谷には 岩魚が居なかったんですが高天ヶ原山荘の小池さんの努力により放流され生息するようになりました
特に赤木沢の美しさと雲ノ平・夢の平・高天原の癒しの景観は素晴らしく富山県を代表する1つになっています
剣岳の男性的な山に対し女性らしい景観が売り物です 
ここ何年雑誌で紹介されりテレビ局が入りにぎやかしいのが残念です
黒部川の地図
今回はテレビ局の撮影で9月9日〜16日までの予定でダムから入る計画でしたが あいにくの台風で入れず12日からになり予定が大きく変わりました 主人は休みが16日までだったので残念でしたが
出来たら鷲羽岳までと思っていたようですが そんな理由で薬師沢小屋で止まりました
台風が去り晴天を期待したのですが 秋雨前線が居座り 雨はそんなに多くなかたようです でも14日だけは大変だったようです
さ〜これより山の報告です(妙子記)

上の廊下の報告(広瀬 弘)

私が山をはじめてから35年になります 主に立山・剣そして薬師岳方面の山や谷そして岩を主に登ってきました
たまに穂高・槍そして後立山の山々を楽しんできました
それは ほとんどピークハンティングでした  確かに綺麗だし 山頂から見る絵は素晴らしいものでした
でも何か物足りないんです・・・・・・ そうした時 妻に言われたんです
下の廊下も何度も行っているし剣大滝も行っている そして上の廊下も行ってる 行ってないのは祖父沢から鷲羽まで行けば黒部の源流すべて遡上したことになるんだよ  ピークハンティングよりその方が奥が深いと思うし自分の誇れる楽しみを持っていたほうが人生ドラマチックだよ と言われた
確かに 黒部川を知りたいし今廃砂の問題が話題になってます 昔から暴れ川として知られていますそんな身近な川を知りたいですよね・・・・ 
それもそうだと思い密かに行く為の計画を練り トレーニングを積んでいたところへ思いがけなく飛び込んできたんです・・・BBTテレビの取材で下の廊下から上の廊下そして鷲羽までの取材が舞い込んできました  私はすぐOKをしました
返事をしてから休暇大丈夫かな・・・・と心配になりましたが幸い休暇も頂けました
折しも台風15号の襲来で3日間自宅待機になりましたが9月12日に出発しました

1日目
ケーブルカー・バスを乗り継ぎ室堂から黒四まで行き 室堂山荘のオーナーの千尋さんのご好意でダムサイトから舟で奥黒部ヒュッテまで入り 少し時間があったので東沢で岩魚を釣り 晩酌のつまみに刺身と骨酒で明日からの遡上の話に花を咲かせながら酔いつぶれて床につきました
黒部ダム

黒四ダム
読売新道

読売新道
奥黒部ヒュッテ

奥黒部ヒュッテ
2日目
朝から快晴 遡上するのにもってこいの天気ですが予報では下り坂なのが気にかかりました
でも気にせず小屋の方に見送られ6時に出発しました  水量もそんなに多くなく水温も温かく最高の条件です
最初の難関の下のビンガのプールも難なくクリヤーをし次の難関の口元のタル沢もかつてはたかまきを余儀なくさせられたのですが今回は中央に浅瀬があってそこも難なくクリヤーをしやがて荒涼とした台地になり廊下沢を右に見てかつて黒五跡と呼ばれる広河原につきました 天気も良いしリラックスムードで一息入れて次の難関の上の黒ビンガに挑みました ここは激流が岸壁にぶつかってどうしても対岸の岩に飛び込んで渡らなければならないところですが日が差していてとても明るい所で金作の出合までは美しい滝が多くあり一番好きな所ですのでカメラマンも撮影に多くの時間を取りました 今晩のビバーク地は金作谷の出合にしてその夜は疲れ果てて晩飯もそこそこにしてツエルトを掛け朝まで熟睡しました

 

下の黒ビンガ

下の黒ビンガの渡渉
下の黒ビンガ

下の黒ビンガ
下の黒ビンガ

下の黒ビンガ
口元のタル沢

口元のタル沢のへつり
口元のタル沢

口元のタル沢
(上流より下流を望む)
上の黒ビンガ

上の黒ビンガのへつり
上の黒ビンガ

上の黒ビンガ
上の黒ビンガ

上の黒ビンガ
すだれ滝

苔むした滝
(通称すだれ滝)
広河原
広河原
3日目
昨日の天候とはうって変わって朝から今にも雨が降りそうである
今日は上の廊下最大の難所を通過しなければならない 多少の雨なら増水もないがまとまった雨が長く降ると逃げる事も出来ない程のゴルジェ地帯である 祈るような思いで6時30分に出発した 
通称S字にさしかかる頃には心配していた雨がぱらついてきた 強く降らないでくれと祈りながら大瀞
(瀞とは急流の中にある流れの穏やかなプールみたいな個所をいいます)を泳いだり激流を渡渉したりザイル40M一杯のへつりをしたりして緊張の連続でした 
皆の顔を見るとひきつっている それ位緊張度が高い 何度来ても嫌な所である
そうこうしてる内にS字を抜け残り一つのへつりをすれば良い辺り(1962m辺り)から激しい雨が降り出してきた 2時間ほど続いた(もっと降ったかもしれないが・・) 源流は濁っていないが赤牛沢・岩苔小谷はすでに濁流である 嫌な予感がしたが源流は濁っていないのを幸いと思い少しスピードを早めれば3時間でB沢まで行けば安心する そこから1時間で薬師沢小屋へ行けるとと思ったのが甘かった・・・・・
岩苔小谷のトロをたかまきして通常なら岩床を流れに逆らって行ける所にさしかかった頃一気に水位が50センチも上がりました 鉄砲水です (これは すでにBBTテレビのニュースで放映されたみたいです・・・・我が家は見てなかったんですが 皆さんから連絡を頂きました・・・)
それからはたかまきに次ぐたかまきの連続で1km進むのに3時間かかりました
日暮れも近くなってきたので立石の奇岩付近で7人がやっと重なり合って寝れるような狭い段丘で2日目のビバークである
金作谷S字

金作谷S字
金作谷
金作谷
(S字上部)
4日目ー奥の廊下ー
昨日の雨と増水はどこへ行ったのかと思われるほどの快晴である 水量も通常 
ただ皆の顔は疲れ気味・・・・多分夕べは眠れなかったようだ・・・・
しかし 天気のためか皆にも余裕が出てきた ここからB沢まではきつい所は無い ただB沢手前のゴルジェでカモシカが死んでいた おそらくトラバースを失敗したんだろう 動物でさえこの黒部で生きていく事の難しい現実を知りました そんな場を皆で力を合わせて乗り切った事は ”なんて感動的なんだ”と身が震えました 本来山とは こういう気持ちを共有できる場であると思う そんな人々と山行きが出来 改めて人間とは素晴らしい!!!と思いました 
台風とそれによる増水で日程も無くなってしまい薬師沢で終りになり源流まで行けなかったのは残念でしたが そんな事には変えられないほどの充実感と貴重な体験をさせて頂きました
同行してくださった皆さんに感謝すると共に 機会を与えてくださったBBTテレビにお礼を申し上げます
立石奇岩

立石の奇岩
落ち込み連続

落ち込みの連続
美しいゴルジェ 美しいゴルジェ

後記

私は 黒部の源流を近い将来再度挑戦したいと思っております
10月になったら下の廊下・剣大滝の撮影に入ります
戻りましたらまた報告いたします
今度は台風がこないように祈っております
なおこのコースは鍛え抜かれた上級者の世界です
きちんとした指導者の指示の元で楽しんでください
有難うございました 




A下の廊下
      <10月12日〜10月16日>

1日目
BBTテレビの上の廊下の撮影も無事に撮り終えて今度は下の廊下の撮影に10月12日〜17日まで5泊6日の予定で私たちは宇奈月から入山しました
マッチ箱みたいなトロッコ電車に揺られる事1時間30分で欅平に着き 途中志合谷を過ぎてからまた雨に降られ
”ついてないな〜”と思いながらひたすら水平道路を歩き5時間余りで今日の泊まる小屋 阿曽原小屋に着きました
ここの小屋のご主人佐々木 泉さんは もと山岳警備隊の隊員でした 私の不注意で遭難者を出した時には 大変お世話になった方です 今でも山小屋の経営をしながら事故があった時は真っ先に救助に向います 髭を生やした顔がとても優しく頼もしい方です
紅葉の下の廊下
紅葉の下の廊下


S字峡
S字峡

2日目
朝が明けました ハッキリとしないどんよりとした今にも雨が降り出しそうな空模様です 天気予報では上がり気味の予報です 朝食を食べてパッキングをし 昨日の雨で濡れた冷たい登山靴を履き出発
仙人ダムからS字峡半月峡を過ぎたあたりから雨も上がり 十字峡に着いた時には素晴らしい天気で 紅葉もここまで来れば随分綺麗で 雨上がりだとその色も鮮やかに見えます
十字峡
十字峡


雨上り
雨上がり


この十字峡は学術的にも珍しく 沢と沢が交わって十文字を描いているので十字峡という名が付けられたそうです
私たちは町では味わえないこの素晴らしい景勝地をバックに昼食を済ませました 余分なものをデポして剣沢大滝を目指します 
私は 先にも述べていますが10年前この大滝に挑戦したときに私の指導の至らなさから 渡渉に失敗し 心臓麻痺で一人の若者を死に至らせました ”こうしたらよかった”とかいろいろに自問の日々が続きました それ以来安全登山を目指してきました 亡くなられた方も十分に経験を積んでおられました ”山にベテランは居ない”と言うのを私の信念としております 教訓により一層の安全登山を心がけております
彼が 息を引き取った場所に来ると10年経った今でも 彼の遺品として置いてきたピッケルやアタックザックが 朽ち果てる事も無くいまだに残っているのを見たときに 走馬灯のように当時を思い出しました
今日のビバーク地点剣沢平で 彼の冥福と私たちの登山の安全を祈りました 
語らい
語らい
焚き火を囲んでの山もほとんどなくなりました 


3日目
朝から快晴! 絶好のアタック日よりで水量も随分と少ない チャンスです でもここはほとんど一日中陽が当らない沢でおまけにまだ雪渓が残っているし水温も低いので出発時間を少し遅らせましたがそれでも渡渉は水が冷たく肌をさすように痛いです 10年前にチロリアンブリッジをした場所は渡渉できます 随分と川幅が広くなりその分だけ渡渉は長くなり体は硬直しそうです そんな感覚で行くうちに最大の難関25Mのヘツリにさしかかりました ここをクリヤーしないと大滝にはいけません 幸いにも残地ハーケンがあったので時間を稼ぐ事が出来ました
それでも滝壷まで行くのに2時間掛かりましたが そこはまさに大きな蛸壺に入ったような所です 前方も両岸も切り立った崖になっていき 頂きを見るのに向って一回りをしないと見渡せない程深い谷になっていて そこに剣沢から流れてきた水が大滝となって落ちているので素晴らしい光景です 
水量も多く爆風が霧となって虹になり迫力満点です
ここにカメラが入るのは NHK以来ですので貴重な映像になります カメラマンも満足のいった映像が撮れたとご満悦な感じですが ここに長く留まる事はできません 爆風で風も舞っているので体感温度は低く10分も居ると寒くて体が震え硬直してきます 早々と引き上げました
ベースキャンプの十字峡に着いたのは5時近くになりました 冷えた体を温めるのに焼酎のお湯割を飲んだ時のおいしさは今も忘れる事は出来ないほど美味しかったです
アタックの朝
アタックの朝


へつり
ヘツリ
<ここを出ると大滝>


へつり
ヘツリ


剣大滝
剣沢大滝

恋しい恋しい姿です 音声を一緒に送りたいくらいです
剣大滝
剣沢大滝


大滝での憩い
剣沢大滝での憩い

4日目
今日も快晴です まだ日も差し込まない日電歩道を白龍峡に向って進みます 十字峡から内蔵助沢の出合まではコースの中で一番迫力があります 10月と言うのにまだ残雪が残っていて高まきを強いられますが 中でも白龍峡が一番でしょう 陽は大タテガビンを照らしていますが別山沢の出合はまだ日陰です ここで遅い朝食を取り丸山東壁を目指します 内蔵助沢で軽い昼食を取っていると 県警のへりが頭の上をかずめて飛んでいきました どうやら遺体のようなものを吊り下げていました また事故かと思うながら丸山東壁のクライミングをしていた所へまた県警のヘリが飛んできてすぐ傍でホバーリングをして救助隊員をピックアップして飛び去っていきました
どうやら丸山東壁第二ルンぜでの滑落らしい 20M滑落したそうです ここはクライマーにとっては素晴らしい所ですが ちょっと集中力が欠けると惨事を引き起こします ここ下の廊下も何でも無い所となめて掛かるとつまずき滑落する事故が多くあります どんなベテランでも事故と背中合わせです 登山というのは100%安全な登山道はありません 常に何かが起きると思いながら登るのが登山です 何かが起きてもそれに対処できる知識も必要です
今回の山行で2件の事故を見ましたが・・・・・見たから言うのではありませんが 改めて安全な登山というものを再認識した4日目でした

 

白龍峡と日電歩道


白龍峡
白龍峡


白龍峡と日電歩道
陽の当る大タテガビン
残雪
残雪


大タテガビン

 

5日目
今日は下山します 
観光客気取りでアルペンルートを室堂に そしてバスで立山駅で解散です 今回の下の廊下の山行で全員が言っているのは上の廊下よりも厳しかったと言っていました 私も疲れました それは岩をくり抜いた40cm位の登山道を1日かけて歩行するのですからこれは岩をへっつているのと同じだと思います 落ちたら危険という思いが絶えず頭の中を横切ります それだけ集中力がいるので疲れるのだと思います 登山家にベテランは居りません 絶えず初心者の気持ちで山を楽しむ事が大切である事を感じた山行でした
長い事おやすみを頂き 本当に有り難かったです 今回の一連の山で人間として多くの事を改めて学ばせて頂きました 私のわがままを許可してくださった局長はじめ職場の皆様有難うございました 特に廊下ですれ違った折”広瀬君 楽しみにしているよ”と声をかけてくださった局長・・・・・嬉しかったです
また 協力してくださった山小屋の皆さん・BBTテレビの皆さん 有難うございました
そして留守番をして私を支えてくれた妻に!!感謝感謝  いい天気が続いたのに何処の山も連れて行ってやることが出来ず ごめん お陰でいい経験が出来ました 感謝

こんな感じで黒部川は流れてくるんです いろいろな問題があると思いますが私たちの環境はこんなに厳しい自然と共存しており 短い距離で日本海に注いでいるんです 
本当に一滴一滴の源流からダムより下の流れの急な荒々しい下の廊下・・・・・・・3000mから0mまで 短い距離でこの落差を流れるなんて感動です 私たちはこんな厳しい自然と生活してるんです 思うに人が自然を支配してるんで無く この自然の中に住まわせてもらっているんです 今回の一連の山でそんな風に思いました
謙虚でありたいと!  有難うございました


B赤木沢

赤木岳を源とし 黒部の源流に注いでいる沢です
7月末〜9月中がベストシーズンです
紅葉の頃がダイナミックな秋が楽しめます
沢登ですので雨の時は要注意です
薬師沢小屋から黒部の源流を上流に向います
道があるような無いような・・・・・
川に沿って歩きます
一部川に漬かりながら進みます
写真は2枚とも赤木沢の出合です
これより沢を登り赤木岳を目指します
赤木沢

赤木沢

赤木沢
赤木沢の入り口です 
石畳が敷いてあるのではないかと思われるようなきれいな滝が連続するところです

赤木沢入口
赤木沢 歩いてきて後ろを振り向くと自分たちが登って来たとこが一目で見えます
上は雲ノ平(祖父岳)です
さらに後ろは水晶岳です
秋の赤木沢も良いでしょ!!
お薦めです
赤木沢で一番美しい滝の連続の所 滝
赤木大滝 赤木大滝 
赤木沢で最大の難所です
右の岸壁をたかまく
最上部の最後の滝 ここを登って草付に出る
草付に出て草花を傷めないように登山靴は禁物です
最後の滝
赤木平手前 赤木平の手前を 草花に気をつけて
遠慮がちに歩く
ここが赤木平 後方の右が水晶岳です
左が赤牛岳
この上が赤木岳です
赤木岳〜北の俣岳〜太郎山〜太郎小屋に至ります
赤木平
薬師沢小屋スタッフ 赤木沢へ登る拠点の薬師沢小屋のスタッフと豪華な晩餐です
左奥が新婚の小池さんです